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欲スィ車を妄想する:クライスラー グランドワゴニア

今回はクライスラー グランドワゴニア

88gw_01-ls.jpeg

ワイルドで古臭い顔つき。60年代あたりの車に見えるでしょう。
でも、この写真のグランドワゴニアは88年式。御年17歳。老けてる。
おまえは、えなりかずきか。

グランドワゴニアの歴史は古い。

1962年、初代ワゴニアがにカイザー社からデビュー。
1970年、カイザー社はAMC(アメリカンモーターカンパニー)に吸収合併される。
1984年、AMCからコンパクトなチェロキーワゴニアが発売されると、
元祖ワゴニアはグランドワゴニアと名称が変更され、上級モデルとされた。
さらに1987年、AMCはクライスラーに吸収合併され、
その後1991年にグランドワゴニアは生産終了。

この流転の歴史30年間、基本的な設計は変えられることなく生産された
グランドワゴニア。この古臭い顔つきは、その頑固な思想によって守られた
伝統なのである。

この車の最大の特徴は、ズバリ木目。こんなに木目が似合う車は他に無い。
当然これにやられちゃってるファンは多く、僕もその一人だ。
今でも学生時代に湘南で見かけたグランドワゴニアの木目が脳裏に焼き付いている。
そのグランドワゴニアは小さなサーフショップの脇に停められていて、
潮風にやられたボディーは艶が無く、所々赤茶色錆びが浮いていた。
しかし。それがまた木目と似合うのである。少しボロい方が味が出てカッコイイ。
またあの木目はデカール(シール)で本物ではない。でもそこが70年代っぽくて好き。

そして、デカイ。中身も外見も。

全長 4,800mm
全幅 1,900mm
全高 1,800mm

日本車のファミリー向けバン(たとえばトヨタ アルファード)なんかと比べて
全長、全高はそうでもないが、全幅 1,900mmってのはかなりデカイ。
ベンツのS600よりもデカイ。走ってる姿は、も、大威張りって感じである。

そしてエンジンは360キュービック・インチのV8(5900cc)。これしかないだ。
正にアメリカンパワフルな走りが期待できる。
でも、やっぱり燃費は2~3Km/Lといったところらしい。

根強い人気があり、いくつもの専門店がある。
価格は高騰して250万以上、程度がいいと300万を超えるらしい。


は~ぁ。
やっぱり僕には買えないので、妄想してみる。思いっきり妄想してみる。。。


「父さん、この車買い換えたら?ボロボロじゃん。ガソリンだし。」
今年17歳になった息子がカーボンファイバー製のブーツで右フロントタイヤの
サイドウォールを蹴りながら言った。
「俺はこれがいいんだよ」
俺は少し軋むドアを開け、ベンチシートに乗り込んだ。

1989年式グランドワゴニアのエンジンをスタートさせ、県境にある
特別自然保存地区に向かって走り出した。

今年初めてのキャンプ。

今までは妻と下の娘も一緒だったが、今日は二人ともいない。
娘が行きたくないそうだ。朝から女同士で渋谷に買い物に行ってしまった。
そういえば最近、娘と言葉を交わすことが少なくなった。避けられているのだ。
あの幼かった娘がそんな年頃になったと思えば感慨深いが、やはり寂しい。
そういうわけで、初めての息子と二人きりのキャンプだ。

「ホント、ボロイよね。父さんいつから乗ってんの」
「おまえが生まれる前からだよ」
「うひょ-、オレより年上かぁ。もうオッサンだねこの車」
「オッサンってほどじゃないよ。まだ30歳だ」
「オッサンじゃん、前世紀ものだもん」

21世紀生まれの息子はよくこの言葉を使う。彼にとって20世紀は彼方の過去だ。
かつて、少年だった俺にとって21世紀は彼方の未来であった。
そこには夢と希望のみが輝きに包まれて見えていた。
息子にとっての未来はどのように見えているのだろうか。

「お、新しいジーパンじゃないか」
「うん、買ったんだ。1998年のヴィンテージユニクロ。デッドストックだよ」
「そいつも前世紀ものじゃないか」
「これはヴィンテージ。ただの前世紀ものとは違うよ」
「ふーん。高かったのか?」
「5万円」
「そんなにするのか。昔はユニクロのジーパンなんて2900円だったぞ」
「安!そんときいっぱい買っておいてくれれば良かったのに」
「俺は昔から先見の明ってやつが無いんだよ」
「せんけんのめいって何?」
「帰ってから辞書で調べろ」

特別自然保存地区の標識をすぎると、あたりは深い緑色に囲まれる。
風に揺れる木々の葉の間から見え隠れする太陽は、すでに橙色の光を放っていた。

少し固めのパワーウィンドウスイッチを押すと、爽やかな風とともに、
360キュービック・インチのV8エンジンの逞しい唸りが入り込んできた。
俺はこの音がたまらなく好きだ。

しかし、この音を聞くことができるのはあと僅かの間かもしれない。
今国会で環境保護強化法案が可決されれば、ガソリン車の一般所有が禁止され、
このグランドワゴニアも冷たい鉄の塊となる運命だ。

今やガソリン車は、急速に高性能化した電気自動車に取って代わられた。
ガソリン車を持つことは社会の悪であるとも言われ始めている。
電力会社の看板が掲げられたパワースタンドで、最新式の充電機が並ぶ片隅に
一台だけ置かれた古ぼけたガソリン補給機で給油するガソリン車オーナーは、
かつて煙草がまだ合法であった頃、ガラスで囲まれた狭い喫煙所に追い込まれた
喫煙者のように、肩身の狭い思いを強いられている。

来慣れた河原に下りると、いつもの大きな流木の脇にグランドワゴニアを停め、
リアゲートを開き、荷台から一通り荷物を降ろした。

「じゃ、頼むぞ」
「オッケー。行ってくるね」

息子は両手に軍手をはめると、少し暗くなり始めた森に入っていった。
いつも薪を拾いに行くのは彼の役目だ。

俺は石を積んでかまどを作り、料理の準備を始めた。
骨付きのラム肉は昨日下ごしらえした。ちょうどよく味が染み込んでいるはずだ。
グランドワゴニアの荷台でパン生地をこね、固く絞ったふきんを掛け発酵させる。
これも家で準備しておきたいところだが、それだと発酵しすぎてしまう。
現地でやるしかない。程よく発酵させたらダッチオーブンで焼く。

夕食のいい香りが漂い始めた。
日はすっかり暮れて、漆黒の闇が辺りを覆い尽くそうとしている。

「イテェ、あーあチクショー」

闇の向こうで、息子の声が聞こえた。
グランドワゴニアのヘッドライトを点灯すると、まぶしそうな顔をした息子が
両手に薪を抱えてこちらに向かってきた。少し足を引きずっている。
俺の目の前でバラバラと薪を投げ出すと、丸太の上に座り込んだ。

「何かに引っ掛かったんだ」
「どれ、見せてみろ」

ランタンで息子の足元を照らす。

「イテェ、ああっ、ジーパンが」

ヴィンテージユニクロの右膝の少し下が鉤型に3センチほど裂けている。
その下に血の滲んだ息子の白い膝小僧が見えた。

「大したことは無いぞ。川の水で洗っとけ」
「大したこと無くないよ、ジーパン破れちゃったよ。俺のユニクロ...」

息子の目に涙が浮かんでいた。小さい頃の息子の顔を思い出した。


「おーい飯だぞ」

返事が無い。
あれっきり息子はグランドワゴニアのボンネットに腰掛けて焚き火を見つめている。
橙色の炎に照らされたその表情は拗ねた幼いものだった。
こいつはまだまだ子供だなと思うと、なぜかふと気が緩んだ。

「おい、そんなにジーパンが破れたのがショックだったか」
「あたりまえじゃないか。だって5万もしたんだ」
「じゃあなんでキャンプにその大事な一張羅を穿いてきたんだ」
「味出ししたかったんだよ。キャンプで履いて体を動かせばいい感じになると思って」
「いい味が出たじゃないか」
「こんなの味じゃないよ」

「おまえキャンプ好きか?」
「好きだよ」
「俺とのキャンプは楽しいか」
「楽しいよ」
「好きで楽しいキャンプの最中にできたジーパンの傷は本物の味なんだよ」
「......」

ボンネットに座る息子の足がぶら下がっているあたり、
フェンダーのタイヤアーチの上が凹んでいる。
凹みの中央は10センチほどの楕円状にすっかり錆びて赤茶色に変色し、
周りのアイボリーの塗装はひび割れ、木目のデカールも剥がれている。
俺はそれをランタンで照らしながら息子に言った。

「おまえこの傷知っていたか?」
「うん。何で直さないの?って思ってた」
「この傷は俺にとっては懐かしい思い出だからさ」
「あれは真夜中の一時頃だった。
 病院からもう生まれそうだって電話がかかってきてな、
 俺はパジャマのままこいつに乗って病院に駆けつけたんだ。
 駐車場は真っ暗で、慌てていたおれは入り口のゲートに派手にぶつけたんだよ。
 何事だって夜勤の看護婦がみんな出てきて、その中の顔見知りの看護婦が
 母さんはもう分娩室に入ったって言うから、俺はエンジンも止めずに
 こいつをそこに置き去りにして、病院に駆け込んだんだ」
「これそのときの傷なの?」
「そうだ。朝になって駐車場に出てきたら、ガス欠でエンジンは止まっていた。
 仕方ないから、病院でポリタンクを借りて、近くのガソリンスタンドまで
 テクテク歩いた。うれしくて小躍りしながらな」
「この傷を見ると、初めて抱いたおまえの感触を思い出すんだよ。
 俺が最高にうれしかったときにできた傷だ」

俺は左手でその傷をさすりながら言った。

「男にとってジーパンや車は友達みたいなもんだ。
 いっしょに色んな事を経験して、お互いにいい味が出て来るんだよ」
「ふーん」

息子はフェンダーの傷とジーパンの傷を見比べながら小さく何度も頷いていた。

「ちょっと待ってろ」

俺は助手席のドアを開けると、グローブコンパートメントの中から紙袋を出した。

「こいつをおまえにやる」
「これ何?」

息子が袋に手を突っ込み、中身を引っ張り出した。

「ジーパン?」
「そうだ、1960年代のリーバイスだ」
「えっ、リーバイスってあの伝説の?」
「501XX。俺が15の時にデッドストックで手に入れた。20年かけて味出し済みだ」
「スゲ-や。もう手に入んないんだよリーバイスって。
 それにしてもこれ傷だらけだね」
「ああ、全部の傷に思い出がある。聞きたいか?」
「うん!」

すっかり機嫌を直した息子はボンネットから飛び降りた。

二人並んで丸太に座り、ちょっと焼きすぎたラム肉をほうばりながら、
久しぶりに俺は懐かしい前世紀の話をした。
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  1. 2005/04/11(月) 19:45:59|
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  3. トラックバック:1|
  4. コメント:7

コメント

やったー

わたし、ユニクロのローライズ持ってます。
ヴィンテージになるまで大事にします!(違・・)
お洒落なサイトかと思いきや、たまにお笑いサイトですね。
私は、物は持ってないんですが、古いものを見るのは
好きで、アメリカンアドバタイジングブックを買って
眺めてます。
本当、楽しそうなご家庭でいいなぁ。
  1. 2005/06/01(水) 03:52:47 |
  2. URL |
  3. kumi #-
  4. [ 編集]

ヴィンテージユニクロブームはきっと来ます。

僕の予測によると、
2020年頃、ロンドンのカムデンあたりでブレーク。

フリースジャケットのファーストモデルのデッドストック
なんて、500GBP(約10万円)くらいで取引されるの。

パンクムーブメントもリバイバルして、
街には色とりどりのモヒカンヘアーの若者たちが、
髪の毛と同じ色のフリースジャケットを着て闊歩する姿が・・・・
  1. 2005/06/01(水) 09:06:21 |
  2. URL |
  3. たかだ #Yp/buQSs
  4. [ 編集]

初めまして

初めまして。検索からたどり着きました。
81’のWAGONEERに乗ってるKAZOOと申します。
素敵な妄想ですね~。思わず読みいってしまいました。ヴィンテージのユニクロかぁ私も大事にして置きます。また立ち寄らせて頂きます。
  1. 2005/06/15(水) 12:26:29 |
  2. URL |
  3. KAZOO #b2.I9V5E
  4. [ 編集]

ハジメマシテ

KAZOOさんこんにちは。

81’のWAGONEERいいなぁ。羨ましいです。

僕のだらだらと長文の妄想を読んでいただいて、ありがとうございます。
WAGONEERってなんか父親を感じるんです。理想の父親像。
力強くて、チョット頑固で、包容力があって。
僕も一応父親なので、WAGONEERみたいな父親になりたいなと。
難しい道のりだなぁ。

カッコイイWAGONEER、いつまでも乗りつづけてくださいね。

  1. 2005/06/15(水) 12:36:22 |
  2. URL |
  3. たかだ #-
  4. [ 編集]

はじめまして

楽しいというより素敵な妄想ですね。
これからも素敵な妄想楽しみにしています。
でも、現実にするのも素敵ですよ!
  1. 2007/03/02(金) 12:29:05 |
  2. URL |
  3. J-Hop #kUr9nKys
  4. [ 編集]

承認待ちコメント

このコメントは管理者の承認待ちです
  1. 2009/08/31(月) 17:42:14 |
  2. |
  3. #
  4. [ 編集]

承認待ちコメント

このコメントは管理者の承認待ちです
  1. 2013/10/11(金) 14:01:25 |
  2. |
  3. #
  4. [ 編集]

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是非ワゴニアワールドへ!

妄想だけじゃなく、是非乗ってください。
  1. 2005/05/12(木) 23:24:03 |
  2. ワゴニアン、KUMAの音楽と車の日々
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